窒素酸化物雑記

NOxxxと名乗る者による、不定期更新ブログ

クロスブリードの原義、”Crossbreed Definition Series”について

お題「好きなシリーズもの」

こんばんは。NOxxxと名乗る者です。

今回の記事は、"Crossbreed Definition Series"について紹介したものです。

はてなブログから提案されたお題である、「好きなシリーズもの」をきっかけに執筆しました。

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まずは、"Crossbreed Definition Series"についての簡単な説明から入りましょう。

 

・"Crossbreed Definition Series"とは?

 

"Crossbreed Definition Series"とは、2010年から発表開始された、The Outside Agencyを中心としたダークドラムンベース界のトッププロデューサーたちによる、ハードコアテクノドラムンベースを融合させた楽曲、クロスブリードを提唱した、シングルシリーズです。

 

クロスブリードについてのもう少し細かい説明は、Myosuke氏主催のハードコアパーティ、HARDGATEのブログの記事に丸投げします。

私が調べた中では、下リンクの説明が、簡潔で詳しく書かれているので、気になる方は読んでみてはいかがでしょうか。(英語です)

 

 

ここからは本題です。

"Crossbreed Definition Series"のPart1からPart3までの全6曲を、紹介していきます。

 

(↓2022/11/15追記)

"Crossbreed Defini Series Unofficial Introduction"と題した、Crossbreed Definition SeriesのPart1からPart3までの全6曲をまとめた動画を作りました。

この記事を書いておいて言うことではないかもしれませんが、音楽は、文章で伝えるよりも、音で伝えた方が的確で奥が深いですので。

10分弱でクロスブリードの定義が学べる(かもしれない)ので、視聴していって下さい。

 

 

・The Outside Agency & Cooh - Soul Keepers

記念すべきクロスブリード第1作目です。

ドラムンベースとしては少し激しく、ハードコアと言うには、これもまた異なる。この2つの融合品といえば、納得いくような気がするかも?」、というような感想が出てくる。これがクロスブリードです。

中盤あたりにある、純粋なハードコア(上リンクでは3:40から)と、純粋なドラムンベース(同じく4:02から)を聴いた後、それを超えてすぐのあたりを聴き比べると、クロスブリードの「ハードコアでもドラムンベースでもない何か」という意味が分かるのではないでしょうか。

まさに、クロスブリードを定義づけるような作品です。

 

 

・The Outside Agency & SPL - Separate Ways

個人的には、後述のSenseless Societyと並んで"Crossbreed Definition Series"最高傑作だと考えています。

クロスブリードの原義の、ハードコア × ドラムンベースとして、完璧な分配で、両ジャンルの良さが最大限掛け合わせられています。

前半は、ダークステップの味がする、重めのキックを載せたドラムンベースパートや、純粋なインダストリアルハードコアパートといった、ジャンルが独立した状態から始まり、後半では真価を発揮し、ハードコアとドラムンベースの共存パートや、4つ打ちハードコアにドラムンベースが介入してきたりなど、クロスブリードの名に恥じない相互融合をしています。

SPLは*ドラムンベースのアーティストでありながら、インダストリアルハードコアにも造詣が深く、少なからずそのことが、現在のクロスブリードとインダストリアルハードコアの仲がいい状態を導いたのかもしれません。

*(当時は、今のようにハードコアとドラムンベースが共存していなかった)

 

 

・The Outside Agency & Counterstrike - My Friends

キックの質感は、ガバキックと言われるような、まさにハードコアで使われるものです。

ダークステップ系の音楽ぐらいでしか聞いたことのない変則的なスネアの打ち方があったり、ドラムンベースでよく使われるブレイクビーツ(現在のクロスブリードでも好んで使われる)を含んでいます。

Counterstrikeの、ダークドラムンベースをルーツとしたような不気味さと、中盤のブレイクのような力強いサウンドが、TOAの創り出す重い世界とマッチした素晴らしい作品です。

 

 

・The Outside Agency & Donny - Among Us

TOAの十八番のガバキックがバキバキに入っている、ハードコア系のクロスブリードのお手本と言えるような作品です。

TOAの暗く重いサウンドに、Donnyのサウンドの持つ不気味な面や、遅いながらも圧迫感のあるハンマービートが加えられた、面白い作品です。

このような、ハードコア強めのクロスブリードは、The Satanが有名でしょうか。

The Satan - Hump

DJ Hidden - Life Blocker (The Satan Remix)

 

余談ですが、各種音楽ストリーミングサービスにおいて、この"Crossbreed Definition Series Part 2"の2曲のクレジットが、TOAしか書いておらず、Counterstrike,Donnyは書かれていないのは直るのでしょうか。

Nagatoが佐倉綾音さん(艦これの長門)になっていることと並んで、どうにかしてくれ案件の1つです。

 

 

・The Outside Agency & Current Value - They Are Human

テクノらしい繰り返し音楽が多い"Crossbreed Definition Series"の中でも、特に、少しの変化を加えながら無機質に繰り返される楽曲です。

スネアはキックに比べて数が少ないものの、Current Valueのスネアが凶悪なために、極度に歪んだハードコア的キックに負けず、前面に出てきています。

キックの主張とスネアの主張が同等ぐらいなので、「ハードコアともドラムンベースとも言えない何か」としてでしか理解できないのかもしれませんね。

(一部の(スネア芸人の)曲は、ほぼスネアでもクロスブリードです。)

 

 

・The Outside Agency & Switch Technique - Senseless Society

現在の、ジャンル「クロスブリード」として確立したスタイルの楽曲として、完成系と言えるほどの圧倒的な楽曲です。

先程も書きましたが、Separate Waysと合わせてこのシリーズ最高傑作の1つだと考えています。

クロスブリード黎明期に発表されたとは思えないほどの作品です。

インダストリアルハードコアを軸に、クロスブリード的にドラムンベースを捩じ込んだようなスタイルです。

DeathmachineやIgneon Systemなどがこのタイプでしょう。

Igneon System & Deathmachine - Sins

暗く重い世界観、極度に歪んだキック、複雑なリズム、金属音のように鳴り響くスネア。このように、クロスブリード黎明期の作品とは思えない素晴らしさです。

この楽曲の作曲者の1人である、Switch Techniqueのスタイルのクロスブリードは、この作品とは比べものにならないほど複雑で、訳がわからないリズムです。

Switch Technique - Dark Visitor

 

 

楽曲紹介はここまでです。本題は以上です。お疲れ様でした。

ここからは、"Crossbreed Definition Series"からは少し離れた余談なので、適当に読み飛ばしていただいても何ら問題ありません。

(前半は歴史的な話なので、比較的面白いかもしれません)

 

・余談

 

ブログ"Dark DnB"や、書籍「ハードコア・テクノ・ガイドブック インダストリアル編」などの文献によると、TOA以外にも、ハードコアとドラムンベース両方のシーンに精通していたDJやプロデューサーが、ハードコアとドラムンベースを混ぜ合わせようとしていたらしいです。(The Panacea, Thrasherなど)(現に、Thrasherの創設したPRSPCTは、クロスブリードのレーベルと言われることも多い)

また、Ruffneckは、2000年代には既に、ハードコアとドラムンベースの融合をし始めており、2004年にDisital, Falcon, Noisia, Spinorといったドラムンベースのトップアーティスト達とスプリットレコードを出していたので、”Crossbreed Definition Series”が発表される10年以上前から、ハードコア界で変革が起ころうとしていたようです。

("Dark DnB"と「ハードコア・テクノ・ガイドブック インダストリアル編」、ならびにその著者のブログ"GHz"には大変お世話になっております。)

 

度々書いている「ハードコア・テクノ・ガイドブック インダストリアル編」とは、Murder ChannelやブログGHzの設立者である、梅ヶ谷雄太さんが執筆された、ハードコアテクノ、特にインダストリアルハードコアについての解説書です。

この書籍には、この記事で取り上げたクロスブリードの、歴史的な解説(p.114-134)や、クロスブリード / ハードコア-ドラムンベースの楽曲紹介(p.153-181)もあり、非常に詳しく、興味深い内容となっています。(この記事を書くにあたり、参考にしたところもあります)

他にも、各アーティストやジャンルでまとめられた楽曲紹介や、TOAのEye-DやOphidian,Trippedなどといった、インダストリアルハードコアの歴史には欠かせないトップアーティスト達へのインタビューなどがあり、ハードコア好きには欠かせない内容です。

是非とも購入して読んでみてはいかがでしょうか。ハードコアフリークならば、後悔しないはずです。

(ステマでも何でもありませんが、その程度の勢いで推したい書籍です。)

 

(おそらく)"Crossbreed Definition Series"の*続編であるシングルが数個ありますが、その中ではThis Never Happenedが好きです。

*(surreal / Chaos Theory, Undermind / Pacifists, Favorite Sins / This Never Happenedなど)

 

TOAを含めこのシリーズの参加者は、今でもハードコア、ドラムンベースシーンの最前線で活躍している方も多いです。20年以上もこの音楽で活動しているだけでも凄いことなのですが、十数年もシーンのトップにいるとは畏れ多いです。

 

ここから少しだけ余談の余談です。

 

現在私の利用しているはてなブログで、お題スロットというものがあったので、今回はそれを元にして記事を書きました。

そのお題は、「好きなシリーズもの」というものでした。

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シリーズものとして一番最初に思いついたものが、"Crossbreed Definition Series"だったので、これについて書きました。

10年選手のポケモンとかカービィとかについて書いても良かったのですがね。

 

お疲れ様でした。以上で終了となります。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。